

推薦作品コメント
「黒い十人の女」
「黒い十人の女」と言えば市川崑監督作品の中でも飛び切りスタイリッシュな映画、
当時最先端のテレビ局プロデューサー役の船越英二はマルチェロ・マストロヤンニか、
マイケル・ケインか、惚けた二枚目風でスクリーンの中でフラフラしている。
岸恵子のトレンチコートのイカシた姿、キュートなCMガールの中村玉緒、、
そしてクセ者、岸田今日子や宮城まり子、、、そんな登場人物が続々登場。
しかし私のお目当ては「天下の美女」とうたわれた山本富士子だ。
「あーた、お飲みになるザンショ?」「そうなんザンスよ、ごめんあそばせ。」
モダンな着物姿で煙草をくゆらしザンス言葉を蓮発すれば、大概の男はノックアウト。
岸恵子と二人でウイスキーを飲みながら男を殺す相談するシーンは火花が散ってゾクゾクです。
そうそうクレイジー・キャッツがテレビの番組収録シーンに登場、
1分にも満たないけれど、メンバー全員揃ったその破壊力に圧倒されました。

推薦作品コメント
「雨月物語」
大学3回生のときフランスにいって、
古いマンガ本を買いあさろうと古本市をめぐっていると、
シモンと名乗る背の低い老人から声をかけられた。
口をとがらせてウゾウゾ、ウゾウゾいっているので「なんですか」とノートと鉛筆をさしだすと、
大文字で「MIZOGUTI」と鉛筆をはしらせ、ぼくは「なるほど」とうなずいた。
ふたりで古い映画館で「UGETSU」を見た。目の前でフィルムがまわっているあいだ、
ふたり、ずうっと白い光につつまれていた。
白い影を、座ったその場に焼きつけてしまうような映画だった。
その夜、酔いつぶれたシモンを、教えられるとおりアパートまで送っていくと、
からだの大きな奥さんが戸口から出てきて、しっしっ、とぼくを追い払うしぐさをした。
ぼくは犬みたいにしっぽを垂らして夜の街を歩きだした。ホテルはとっていなかった。
映画館にもどって石段の下で寝た。

推薦作品コメント
「恋文」
女優、田中絹代の初監督作品。
戦後の混沌期、森雅之演じる復員兵礼吉は
米兵相手のラブレター代筆で糊口をしのぐ日々を過ごしていた。
礼吉には、想いを寄せながら生き別れとなった運命の人道子の存在が忘れられず、
弟の住まいに居候しながら虚ろな日々を送っている。
ある日、道子が代筆依頼に現れたことで、その境遇の変化を知ることになるが・・。
正義感で他者を責め立てることの恐ろしさ、
弱者間の差異による争いからそもそもの依存構造に目が届かない愚かさなど、
SNS、ジェンダー時代の昨今こそ見返すべき鋭さも。
シャンタル・アケルマン、バーバラ・ローデン、アニエス・ヴァルダと、
相次いで女性監督の傑作が再評価される昨今、
その流れでも再び脚光を浴びるべき佳作。
洋書の屋台販売など、戦後ならではのディティールも本好きには嬉しい。

(京まちなか映画祭広報)
推薦作品コメント
「隠し砦の三悪人」
好きな俳優に憧れて所作を真似したり、
服装や趣味を近づけることってありますよね。
当然、似ても似つかず自己満足だけで終わることがほとんど。
僕にとって、そんな俳優さんが三船敏郎なんです。
今回は数多い三船敏郎出演作の中から、この作品を推薦いたします。
かのジョージ・ルーカスが「スターウォーズ」のヒントにしたと公言する名作。
アクション、スケールともに一級品の時代劇、皆様にスクリーンでご覧頂きたいです。
会場で一緒に楽しみましょう!